目に見えない3つの大切な経営資源(1)リーダーの熱が組織の生命力の源

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熱気がある職場、ない職場の違い

経営資源というと何を思い浮かべるでしょうか。

一般的には、

「人、モノ、カネ、情報」

と言われます。

もう少し言えば

「戦略、計画、組織、仕組み、ノウハウ」

といったものも重要な経営資源です。

ただ、

私なりに思うのは、もっと重要な経営資源があります。

それは、次の3つ、

①熱気

②繋がり

③カルチャー

です。

これら3つには共通した特徴があります。

それは、目に見えない、ということです。

この仕事を始めて18年が経ち、

まだまだ分からないことの方が多く、日々発見の連続ですが、

それでも自分なりに解ってきたこともあります。

それは、「本当に大事なものほど目に見えない」ということです。

例えば、経営改善する、組織課題を解決する、といった際

多くの場合は目に見える対象に変化を加えようとします。

例えば、戦略を変える、やり方を変える、制度を変える、組織を変える、人を変える、、、

もちろん、それで問題が解決するのであれば、

それに越したことはありません。

しかし、それでは一向に問題が解決しない場合、

その問題の根本的な原因は、目に見えない領域にあること圧倒的に多いように思います。

3つの中でも最も根幹を成すもの、

それが、①の熱気です。

熱気は当然ながら目に見えません。

でも、肌で感じます。

特に第三者の立場で介入すると、

熱量の高い職場、そうでない職場は明白です。

まず、

そこで働いている人の表情、目つきが全然違います。

熱気がある職場は、感情表現が豊かであり、

目に力が宿っています。

逆に、

そうでない職場は、表情が乏しく、伏し目がち、

皆、目線が下を向いて歩いてるんですね。

そして、もう一つ決定的な違いがあります。

それは当事者意識です。

熱気を感じられる職場は、

「私は⚪︎⚪︎だ」という一人称の発言が多く

そうでない職場は、

「あの人は⚪︎⚪︎だ」という二人称や

「この職場は⚪︎⚪︎だ」という三人称の発言が

大部分を占めます。

つまり、前者は職場の問題を自分事化しており、

後者は職場の問題を他人事化している。

他人事化している人が多い職場は、

見て見ぬ振りが多く、自分を守るので精一杯

自分事化している人が多い職場は、

レスポンスが早い、

そして、一人ひとりの守備範囲が広い

つまり自分の責任範囲を越えた発言や行動がある、

自分事として捉えている証拠です。

熱気がない、というのは実は組織としては死に近づいています。

希望を失ったとき、人は老いるんです。

組織も同じ。

熱気がないということは、組織が生きる希望を失いかけている、

死に近づいているサイン。

だから、生きる希望を取り戻さない限り、組織は蘇らない。

誰の?

もちろん経営者を筆頭とするマネジメント層です。

希望を失いかけている組織では、どんな施策や戦略も無意味です。

本気でないから、すべてが中途半端に終わってしまう。

下手に施策を考えるよりも、

「自分はいつから魂を売ったのか」

を問い直す方が先です。

なぜなら、

チームや組織の熱気が下がっている、

ということは、

間違いなくリーダーの熱が冷めているからです。

逆を言えば、

リーダーの熱がない中で、

組織やチームが勝手に熱を帯びることはありません。

だから、

リーダーは、他人のことをどうこうする以前に

まずもって、自分自身の熱を燃やす必要があります。

動機づけるのは、

部下ではなく自分自身です。

個の熱が失われる理由

個の熱気が失われる要因は大きく2つあります。

①自分をごまかす

②リスクをとっていない

①の自分をごまかす、とは、

本当はやりたくないのに我慢してやる、

本当はそう思ってないのに相手に合わせる、

本当は言いたいことがあるけど言わない、

等々です。

人は自分の思いとは違う行動をやり続けたら、

魂が抜けてしまうんです。

例えば、

「これ意味ないよな、、、」って思いながら仕事をし続けたら、

何も感じない人になってしまいます。

意味がなくてもやり続けられるのは機械です。

人は機械ではありません。

「本当はこうしたいのに」って思いを無視しながら

自分の身を守ることを優先に仕事を続けたら、

いつか自分が本当は何がしたかったのかを忘れてしまいます。

だから、

まず売った魂を取り戻す必要がある。

自分は本当はどうしたかったのか、

自分が言いたかったことは何か、

自分は何を我慢してきたのか、

自分は何を諦めたのか、

地下に押し込めた感情を爆発させない限り、

自分の魂は蘇らない。

感情はパワーです。

ただ、

それは、必ずしも最適解とは限らない。

全てをぶち壊すかもしれない、

全否定されるかもしれない、

大喧嘩になるかもしれない、

誰もついてこないかもしれない、

それでも、確かに存在している自己と正面から対峙しなければ何も始まらない。

②のリスクをとらない、とは

言い換えれば、

できることしかやっていない、

できそうなことしかやっていない。

つまり、

自分を守りすぎている、ということです。

でも、

攻撃は最大の防御、

人が最も生きる力がみなぎってくるのは、

死と直面するときです。

ヤバいかもしれない、大失敗するかもしれない、野垂れ死ぬかもしれない、

死を意識すると、人は必死になります。

よく火事場の馬鹿力、と言いますが、

まさに、

普段抑えていた力が湧き出てきて、

創造力やインスピレーションが研ぎ澄まされます。

それに、

安全は道ばかり選んでいると、

だんだん飽きてくるんですね。

新鮮味がなくなるから、

興味がなくなっていくんです。

でも、

できるからそっちに流れてしまう。

これで本当にいいんだろうか?

っていう自問自答はあるんです。

だから、

見通しが立たない、、、

正解かも分からない、、、

けども何か惹かれる、、、

どうしよう、、、

そう迷うのなら、

その気持ちをなかったことにせず、

勇気を出して、

一歩踏み出してみる。

そうすると、

危険だと思っていた道は

案外危険ではなかったことがわかります。

それに、

危険な道というのは、往々にして

自分が本当に行きたかった道、

望んでいた道、

生きる希望そのものです。

そして、

そんなリーダーの生きる希望は、

熱源となり、組織全体に飛び火していく、

リーダーの熱は組織の生命力そのものです。

最後まで読んでいただき、有難うございました。

(続く)

岡本太郎「自分の中に毒を持て」より

今も昔も、安住に心揺れそうになる自分に「目を覚ませ!」「自分をごまかすな!」と強烈に魂に訴えてくる、岡本太郎 著書の「自分の中に毒を持て」。その中でも、私が大好きな一節をご紹介します。

十八歳でパリに来て、画家としての夢を描いた。そして芸術運動の最前衛のグループにとび込んだ。そこに情熱も張りもあった。闘った。しかしやがて一方、人間の本当の生き方はタブローという枠の中で美を追求することだけではないのではないか。もっとひろく、そしてもっとぎりぎりの、自分という人間の全存在、生命それ自体が完全燃焼するような生に賭けるべきなのではないか、そういう自分自身への問いに全身でぶつからずにはいられなかった。

絵描きは絵の技術だけ、腕をみがけばいいという一般的な考え方には、ぼくはどうしても納得できなかったのだ。

しかしそれは極めて危険な問いだ。芸術ばかりでない。他の部門のあらゆる専門家、さまざまの企業内の社員でもみんなそうだと思うのだが、この道一筋、ただ自分の職能だけに精進すれば尊敬もされる、報われもする。

それを根本的に疑ったり、捨ててしまえば生きてはいけない。食ってもいけないということになる。与えられた枠からはみ出して、いわば無目的的に自分をひろげていくとすれば、その先は真暗な未知、最も危険な状況に落ち込むことを覚悟しなければならない。

それは極端にいえば死を意味する。

しかし、社会の分業化された狭いシステムの中に自分をとじ込め、安全に、間違いない生き方をすることが本当であるのかどうか、若いぼくの心につきつけられた強烈な疑問だった。

残酷な思いで、迷った。ぼくはごまかすことができないたちだから。そして……いまでもはっきり思い出す。ある夕方、ぼくはキャフェのテラスにいた。一人で座って、絶望的な気持ちで街路を見つめていた。うすい夕陽が斜めにさし込んでいた。

「安全な道をとるか、危険な道をとるか、だ」

あれか、これか。

どうしてその時そんなことを考えたのか、いまはもう覚えていない。ただ、この時にこそ己に決断を下すのだ。戦慄が身体の中を通り抜ける。この瞬間に、自分自身になるのだ、なるべきだ、ぐっと総身に力を入れた。

「危険な道をとる」

いのちを投げ出す気持ちで、自らに誓った。死に対面する以外の生はないのだ。その他の空しい条件は切り捨てよう。そして、運命を爆発させるのだ。

著者プロフィール 渥美崇史

  • 1980年静岡県浜松市生まれ。株式会社ピュアテラックス 代表取締役。
  • 2003年、大学卒業後、ヘルスケアに特化した経営コンサルティンググループに入社し、評価制度や報酬制度の設計などの人事コンサルティングに従事する。その後、戦略や仕組みだけでは経営が改善されない現実を目の当たりにし、それらを動かすマネジメント層の教育に軸足を移す。2009年、マネジメントスクールの新規事業を立ち上げ、事業責任者を務める。約30,000人以上のマネジャーの成長を支援する事業に育てる。
  • その後、自社の運営にもマネジャーとして携わる中、トップの世代交代による経営危機に直面する。業績低迷、社員の大量離職が続く中、学習する組織、U理論といった組織論・変容理論に出会い、自身の人生観が180度変わるほどのインパクトを受ける。その知見を社内に持ち帰り、約2年間をかけて新しい組織文化への変革に取り組み、 当時の過去最高利益を達成する。その実体験と理論をベースにクライアントの組織変革を始める。
  • 2016年、13年間勤めた会社を退職し、独立する。社名の由来である”命の輝きを照らす”をミッションに、人間主体の組織マネジメントへの変革と自己のオリジナリティを生かしたリーダーシップ開発に力を入れている。
  • 好きな書籍は「自分の中に毒を持て」「星の王子さま」。自由・冒険・探求がキーワード。犬並みに嗅覚が鋭い。この世で一番嫌いなものはオバケ(極度の怖がりのため)。射手座AB型二人兄弟の次男。
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