上司に必要な「聴く力」 〜なぜあの人の話は聴けないのか〜

「聞く」と「聴く」の違い
季節も冬に近づき、
そろそろ面談の時期になってきましたね。
面談で最も必要なスキルと言えば、
「聴く」スキルです。
そもそも聴くには「聞く」と「聴く」の2種類があります。
前者は頭で聞き、後者は心で聴く
前者は思考を使って聞き、後者は五感を使って聴きます。
前者は問題解決的な聞き方であり、後者は共感的な聴き方です。
実際、人は全てを言葉にするわけではなく、いつも本当のことが話されるわけではなく、言語でのコミュニケーションは7%、声のトーンや話し方、雰囲気も含めた非言語でのコミュニケーションが93%と言われています。
そのため、耳で聞くだけでなく、直感・感覚・感性を開き、本当に部下が言いたいことは何か、言葉にしていない声は何か、を全身で聴く(感じる)ことが必要です。
それは、実際に聴けるかどうかでなはなく、聴こうとする姿勢があるかどうかでもあります。
しかし、実際には前者の頭で聴くことの方が上司は慣れています。
頭で聞いていると、常にそこには評価判断があり、実際に相手の話を聴いているようで
「分かってないな」「いつも言い訳ばかりだな」「それは間違っている」「どうやって分からせようか」と次に何を言おうか頭の中で考えている自分がいます。
つまり、実際には聞いているようで聞いていません。
南アフリカのアパルトヘイト問題やコロンビアの内戦など、世界のさまざまな対立や紛争問題を、対話による平和的なアプローチで取り組み、多大な成果を残してきたアダム・カヘン氏は、
「人は頭の中で次に何を言おうかという弾丸を込めながら話を聞いている」といったメタファーで表現しています。
この聞き方から始まると、相手は自分の話を聴いてもらった、受け止めてもらったという体験が起こらないため、いくら正しいアドバイスや指導をしたとしても心に入っていきません。
人は誰しも、自分のことを分かってもらいたい、受け止めてもらいたい、というニーズがあります。
そのため、まずは共感的に聴き、次に問題解決的に聞く、というのがコミュニケーションの基本プロセスになります。
私たちは正しいことを言えばよいわけではないことを頭では理解していながらも、実際には自分なりの正しさで相手をねじ伏せてしようとします。
とくに上司はパワーが強いので、どうしても「説得」になってしまいます。
説得は瞬発力はありますが、本心で動くわけではないため持続性がありません。
「聴く」とはコントロールしないこと
部下が自ら気づき、自ら動く、そういった状態を創り出していくためには、上司の「聴く力」が問われます。
「聴く力」が高まっていくと、相手をこっちの方向に誘導しようとか、正しい方向に導こうとか、そういった意図やコントロールがなくなっていきます。
実はここが「聴く」ことができるかどうかの最大の難関です。
人は自分なりの人生経験、成功体験に基づく「正しさ」や「べき論」を持っているため、
自分の価値観と相反するものをぶつけられると瞬間的に反応し、相手を否定しなくなる衝動が起こります。
これは、心の問題ではなく、脳の問題です。
脳はこれまでの経験に基づき自分なりの価値体系を構築し、それが無意識に自分にとっての正解となり、自分や他者、世界を裁きます。
つまり、これがコントロールです。
コントロールは支配的であり、部下を自分なりの枠の中に押さえ込もうします。
従順で素直な部下が出来上がるかもしれませが、自立的で主体的な部下、もっと言えば、自分を超えていくような部下が生まれることはありません。
実際に、自分と相反する価値観の人とは、自分の器を広げてくれる相手でもあります。
なので、このとき上司に必要な姿勢としては、
相手を否定しようとするのではなく、自分の何を否定、抑制しようとしているのか、自分はどのような価値体系に縛られているのか、という内省です。
他者へのコントロールは、即ち自分へのコントロールとして働いているからです。
つまり、説得しなくなる、否定したくなる、ということは、自分が自分に対して無意識に言い聞かせていることは何か、自分がどんな規範や常識に囚われているのかに気づくチャンスでもあります。
そうやって、私たちは様々な対人関係を通して、自分の固定的な枠組み、モノの見方を広げていくことができます。
それは、自分自身を自由にしていくことにも繋がります。
自分が自由になると、相手も自由になります。
上司のコントロールがなくなっていくと、部下の主体性が生まれてきます。
自分の道を自分で歩もうという小さな炎が芽生えてきます。
そして、上司にはそんな小さな炎を守り、育てていく役割があります。
焚き火と同じです。
初め小さな炎は、ときに激しく燃えたりもしますが、そのまま放っておくと消えてしまいます。
最初は注意深く見守り、消えないように薪を足し、手をかけていく必要があります。
そうしていくだんだんと炎が安定し、手をかけなくても静かに、それでいて熱く燃え続ける状態が生まれます。
人材育成もそれと同じです。
部下の自立を促すのであれば、上司の聴くスキルは必須です。
まずは、
自分は部下の話を本当に聴けているのか?
そこから問い直してみてもよいかもしれませんね。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
著者プロフィール 渥美崇史
- 1980年静岡県浜松市生まれ。
- 2003年、大学卒業後、ヘルスケアに特化した経営コンサルティンググループに入社し、評価制度や報酬制度の設計などの人事コンサルティングに従事する。その後、戦略や仕組みだけでは経営が改善されない現実を目の当たりにし、それらを動かすマネジメント層の教育に軸足を移す。2009年、マネジメントスクールの新規事業を立ち上げ、事業責任者を務める。約30,000人以上のマネジャーの成長を支援する事業に育てる。
- その後、自社の運営にもマネジャーとして携わる中、トップの世代交代による経営危機に直面する。業績低迷、社員の大量離職が続く中、学習する組織、U理論といった組織論・変容理論に出会い、自身の人生観が180度変わるほどのインパクトを受ける。その知見を社内に持ち帰り、約2年間をかけて新しい組織文化への変革に取り組み、 当時の過去最高利益を達成する。その実体験と理論をベースにクライアントの組織変革を始める。
- 2016年、13年間勤めた会社を退職し、独立する。社名の由来である”命の輝きを照らす”をミッションに、人間主体の組織マネジメントへの変革と自己のオリジナリティを生かしたリーダーシップ開発に力を入れている。
- 好きな書籍は「自分の中に毒を持て」「星の王子さま」。自由・冒険・探求がキーワード。犬並みに嗅覚が鋭い。この世で一番嫌いなものはオバケ(極度の怖がりのため)。射手座AB型二人兄弟の次男。
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