”リーダーに向いてない”なんて言わないで

自信が持てないから向いてないわけじゃない
”自分はリーダーに向いていない、そもそもそういうタイプじゃない、やりたくてやってるわけじゃない”
これまで医療福祉のおよそ何万人のリーダーの方々とお会いしてきましたが、このような発言は今も昔も非常に多く聞くセリフです。
そもそも医師や看護師といったように専門職としてキャリアをスタートしているため、プレイヤーから離れることを嫌う方が圧倒的に多く、マネジメント側に就きたと思っている方が少ないのはこの業界の特徴であると言えます。
加えて、医療福祉は女性が過半数を占める職場であり、これは業界関係なく一般企業においても同様ですが、女性はリーダー職に就くことに対して、男性よりも不安が強い傾向があります。
女性が不安心理を抱きやすい理由として、生物学的に女性は命を守るという本能があり安全へのニーズが高いから、という説もあります。
また、男性は好んでポストに就くのに対して、女性は上司に説得されて仕方なく就くというケースが圧倒的に多いのも日本社会の特徴と言えます。
そのため、冒頭のように自分は向いていない、自信がない、本当はやりたくない、というのが特に女性が一般職から初めてリーダー職に就く際にぶつかる最初の大きな壁のように感じます。
ただその一方で、振り返ったときに、実際にリーダー職に就いて良かったとポジティブに感じる方が、男性よりも女性の方が多いという事実もあります。
ちなみに、ここで言うリーダー職というのは一般的には係長・主任・リーダーといった初めてその組織の役職に就く(組織によって呼称は様々ですが)現場監督職であり、現場業務とマネジメント業務の双方を担うプレイングマネジャーのことを指します。
これはいつもお伝えするのですが、”自信がないのは普通のこと、だってやったことないんだから。やったことないことに自信を持てないのは当たり前、だからやる前から向いていないなんて言わないで”と。
それに、向いてないって言うことで本気で勝負することから逃げれるんです。
だってそう言っとけば上手くいかなくても、そもそも向いてなかったからって言い訳できるでしょ。
全力出して失敗するのが一番傷つくから、どこかで人は可能性を残しておきたい、本気出せばもっとやれるって。
そのために、自分に対する期待値を予め下げて余力を残しておく、これって誰に失礼かって自分に対して一番失礼です。
自分で自分をバカにしてる。
だって、あなた向いてないよ、って人から言われたらムカつきません?
自分で言っといて人から言われたら腹立つって、矛盾しています。
それは、心の奥では向いてないって思ってないから、思いたくないから、
認めてないって証拠です、自分を諦めてないって証拠。
確かに自信はないかもしれないけど、プライドはあるんです。自尊心。
だったらその自尊心を守るためにも、勝負するしかない。
自信は必ずあとからついてくる。
逃げるわけでも勝負するわけでもない、これ一番中途半端でもったいないです。
向いてないって思ってもいい、自信がなくてもいい、
そういった不安を抱えながらも舞台の中央に立ってみる。
小学生から中学生へ
中学生から高校生へ
誰もが最初は初舞台、
そうやってこれまでも舞台を変えてきたはず。
それは仕事も一緒。
最初はぎこちなくても、身体は徐々にその舞台に合ってくるから。
それにその舞台でしか得られない喜びと感動がある。
それは舞台の中央に立たなきゃ分からない。
プレイングマネジャーは、逃げ場があるんです。
プレイヤーという逃げ場。
こっちは慣れ親しんだ舞台、自信もある。
それに現場からも求められる。
現場から離れることで部下に抜かれるんじゃないという葛藤もある。
だから、そこに逃げ込む誘惑は常にある。
でも、そこはあなたの舞台ではありません。
部下と同じ舞台で競わないで。
任されるってことは”今度はここがあなたの舞台ですよ”って言われてるってこと。
リーダーという舞台。
それを受け入れたのなら、もうその舞台に立つしかない。
慣れ親しんだ舞台から降り、
新しい舞台で自分を輝かせるしかない。
完璧な上司なんて存在しない
人事の世界では”全ての上司無能論”という説があります。
どういうことかと言うと、全ての上司は無能、だから部下は常に上司に不満を感じる、
というこれだけでは身も蓋もない話なので、もう少し解説すると、
例えば、主任になりました。その時点で主任としての能力があるかと言うと当然ないわけです。就いたばかりなので主任Level1です。ではいままでどこにいたか、現場Level30です。でもそこを卒業したから主任に入学した。主任一年生です。そこから主任としてのキャリアを歩んでいくことで、徐々に主任としてのLevelを上げていくわけです。
部下はその主任がLevelいくつかなんて目では見ません。主任には主任の役割を果たしてほしいし、課長には課長の役割を果たしてほしい、仮にLevel30を主任有段者とすると、その主任のLevelがいくつであろうと部下はLevel30の主任像を期待するわけです。
なので、主任に成り立てのLevel1なんて部下からすると不満だらけです。でも、徐々にLevelを上げていくことで、部下からの不満も少なくなり、逆に信頼の割合が増えていく。主任Level30なんてなれば、部下からすれば素晴らしい主任です。でも、多くの場合は、もっと前の段階で次のポストに昇進します。
なぜか?
それは、経営側から見れば主任Level30の実力がある人に主任のままいられたら困るわけです。主任Level30は主任有段者といいました。つまり、そのエリアにおいては敵なし、ドラクエで言えば、雑魚キャラを無傷で倒してる状態なのです。次のステージに進んでもらわないと、いつまでも雑魚キャラを倒して優越感に浸っている場合じゃない、次のステージは係長です、新たな武器と盾を持ち、次の大陸に進んでより強い敵を倒してください、それが1日でも早く世界が平和なる道です、と指令を受けるわけです。(すいません、ドラクエ風で)
そうすると、例えば主任Level20から今度は係長Level1になる。ドラクエでも転職したらLevel1に戻りますよね 笑
新しい大陸に行くと敵が一段階強くなってる、一発で大きなダメージ受けて死にそうになる 笑
つまりぶつかる課題がこれまでよりもでかくなるわけです。だから係長Level1では全然歯が立たない。
そして部下からは今度は主任ではなく係長として見られる。すると、主任としては満点だったけど、係長としてはまだ全然だよね、と期待値が上がった分、不満が大きくなるわけです。
役職というのは一つの期待値を示します。
主任ならこれぐらい、係長ならこれぐらい、課長ならこれぐらい、というその組織なりの期待値があります。
そして、その期待値を上回ればよくやっているという話になるし、その期待値を下回れば、まだまだという話になります。
ステージが上がれば、同然期待値は上がる、そして最初は当然その期待値に追いついていない、追いついたら追いついたで次のステージに移る、だからいつまで経っても全ての上司はそのポストにおいて不十分、ということになります。
無能というのは少し言い過ぎのような気もしますが、要は上司というのは常に不満を持たれ続ける存在、全ての上司は不完全、完璧な上司など存在しない、ということです。
やってきた事実を正当に評価する
だから、上手くいかないから向いてないって思わないでください。
最初はみんな右も左も分からず失敗だらけです。
落ち込むことも多いと思います。
でも、そうした失敗から学んで得た教訓を地肉化していく方がよっぽど大事です。
そうやって徐々に新しい舞台でどう振る舞えばよいかが体感的に分かってくるはずです。
そして、最初からLevel30の主任を目指さなくてもいいと思います。そこを絶対基準としたら、自分はダメだ、全然できていない、という話にしかならず、ますます自分を苦しめます。
それよりも、Level1からLevel2に、Level2からLevel3に、一歩先に進んだ自分をちゃんと認めることが大事だと思います。
リーダーやマネジャーに就く方って真面目で責任感が強い方が多いんです。
自分に厳しい、だから信頼されて任されるって話なのですが、自分に厳しくしすぎたら、中々自信って持てません。期待値が高いから、”自分はいつもまだまだ”って思ってしまう。
これ、終わりがないです、ほんとに。無限ループ。
無限ループから抜け出すためには、まず自分が無限ループにはまっていることに気づく必要があります。
これ、意外と気づきにくいです。
だからまずは自分を俯瞰的に観ることが大事です。
このループにはまっていると、
”すごいですね”って言っても、”そんなことないです”って全然受けとらない 笑
自分に厳しすぎると満足感を得難いんです。
褒められることが少ないって言われるリーダーの方って多いですが、実は褒められても受けとってないため、その事実は記憶から抹消されている、っていう説もあります 笑
だから、褒めたらたら素直に受けとってあげてください 笑
言った本人からすれば、お世辞で言ってるわけではなく、本当にそう思って言ってるんですから。
それに自分に厳しすぎると、部下にも同じ基準を求めてしまいます。
それだと、部下の小さな変化や成長を見逃しちゃいます。
自分の基準を満たしてくれる部下はOKだけど、そこに到達しないとあとは全部ダメってなります。
もう赤ペン先生の赤だらけ、間違いが気になって気になって仕方ない。
直したくて直したくて仕方ない 笑
でも、10人いたらみんな個性は違い、その成長速度もバラバラです。
自分への期待値と部下一人ひとりへの期待値は別物です。
Level3の部下は次Level4に、Level10の部下は次Level11に。
一人ひとりに期待値を示す、これ、上司の大切な役割だと思います。
次自分はどこを目指したらよいのか、目的地が明確になり、そこに到達することで、自分は成長したという実感を持つことができる。
上司の役割って”まだまだだね”って部下にダメだしすることじゃなく、”俺やればできるじゃん”って部下に自信を持たせることだと思います。
自信を失ったら人は潰れます。
自信があれば人はどこまでも進める。
それはできるかどうかの自信じゃなくて、
できなくても大丈夫という自分への信頼、
それが本当の自信です。
だから、
部下を調子に乗らせましょう 笑
勘違いされたら困るっていう話もあるかもしれませんが、勘違いしてるからチャレンジできるって側面もあります。
自信がなかったら、人はチャレンジなんてできない、いつも二の足を踏んでしまいます。
だから、勘違いするぐらいがちょうどいんじゃないかなって思います
勘違いはいつか本物になるから。
それを信じきるのが上司の役目ではないでしょうか。
自分のことを120%信頼してくる上司の存在って本当に大きいです。
勇気が湧いてきます。
失敗しても大丈夫だって思えます。
自分もやれるんじゃないかって思えます。
だから、
もし自信が持てない部下がいたら
”あなたなら大丈夫”
”あなたなら絶対できる”
そう言ってあげてください。
それでも
”なんでそう思うんですか?”って言われたら
”私がそう思うから”
って言ってあげてください。
私が根拠、だから絶対大丈夫って 笑
そんな上司の言葉は何よりも部下の支えになるはず。
だから、そのためにも、まずは何よりも自分自身が、
変に悲観的にならず、変に楽観的にならず、
自分自身を正当に評価する、やってきた事実をありのまま観る、ってことが大事だと思います。
案外やれてる自分に気づくはずです。
頑張ってここまできた自分に気づくはずです。
それが自信だと思います。
だから、
自信は、積み上げてきた事実、そして、それを正当に観る力、この2つによって生まれるものではないかと思います。
最後にあなたに
やったことがないのに、自信がないのは当たり前のこと。
だから、やる前から向いてないってはなから諦めないで。
まずはやってみて、失敗しても上手くいかないのが普通だから。
あなたが尊敬するあの人も、たくんさんの失敗があって今がある。
たとえ9上手くいかなくても、上手くいった1をちゃんと見てあげて。
その1を今度は2にしたらいいから。
ちょとずつ、少しずつでいいから、
周りと比較する必要なんてない、
自分のペースでいい。
失敗してもあなたの価値は何ら変わらない。
だからまずは一歩踏み出してみて、
焦らなくていいから。
疲れたら休憩したらいいし、
後戻りするのも全然あり。
誰も責めない、
誰も責めることなんてできない。
だって、あなたの人生だから。
それでたまには振り返って、
進んだ距離を見てみて。
それはそれは、
長い距離を歩いてきたはず。
ここまで歩んできた事実が
あなたの自信そのもの。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
著者プロフィール 渥美崇史
- 1980年静岡県浜松市生まれ。株式会社ピュアテラックス 代表取締役。
- 2003年、大学卒業後、ヘルスケアに特化した経営コンサルティンググループに入社し、評価制度や報酬制度の設計などの人事コンサルティングに従事する。その後、戦略や仕組みだけでは経営が改善されない現実を目の当たりにし、それらを動かすマネジメント層の教育に軸足を移す。2009年、マネジメントスクールの新規事業を立ち上げ、事業責任者を務める。約30,000人以上のマネジャーの成長を支援する事業に育てる。
- その後、自社の運営にもマネジャーとして携わる中、トップの世代交代による経営危機に直面する。業績低迷、社員の大量離職が続く中、学習する組織、U理論といった組織論・変容理論に出会い、自身の人生観が180度変わるほどのインパクトを受ける。その知見を社内に持ち帰り、約2年間をかけて新しい組織文化への変革に取り組み、 当時の過去最高利益を達成する。その実体験と理論をベースにクライアントの組織変革を始める。
- 2016年、13年間勤めた会社を退職し、独立する。社名の由来である”命の輝きを照らす”をミッションに、人間主体の組織マネジメントへの変革と自己のオリジナリティを生かしたリーダーシップ開発に力を入れている。
- 好きな書籍は「星の王子さま」「アルケミスト 夢を旅した少年」。自由・冒険・探求がキーワード。犬並みに嗅覚が鋭い。この世で一番嫌いなものはオバケ(極度の怖がりのため)。射手座AB型二人兄弟の次男。
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