リーダーに問われる人間的成熟、葛藤を乗り越え「脱皮」する

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“伸び悩み”はなぜ起こるのか

秋晴れがとても気持ちいですね。

空気が透き通って空がほんとに綺麗です。

晴れの日は気持ちいですよね。

でも、いつも晴れの日ばかりじゃないです。

雨の日もあれば曇りの日もある。

人の心のようですね。

天気ばかりはコントロールできない。

それと同じで、

人の心をコントロールすることなんてできない。

もちろん自分の心もコントロールできない。

私たち人間は、

コントロールできないものをコントロールしようとする、

コントロール願望は人類共通のエゴですね。

でも、結局は

天気のように自然の流れに身を任せるしかないのだと思います。

天気に逆らうことなんてできない、

人間も自然の一部ですから。

では本題に。

今回は「人間的成熟と心理的葛藤」をテーマに。

リーダーやマネジャーが問われるのは結局は人間力なので

スキル以上に人間的に成熟していくことは避けられないテーマです。

よく組織はトップの器以上にはならない、

器以上になれば潰れる、と言われますが、

立場的に上に立つ人間の精神的な成熟度合いは、チームや組織の進化に多大な影響を与えます。

では、葛藤や心の揺らぎはなぜ起こるのか

それは、人間の精神的な発達のために起こります。

成熟とも言います。

成人発達理論では、人間の意識が発達していくと、視野が拡大し、他者のみならず、置かれている状況も含めて、自分たちを取り巻く曖昧なものをより受容することができるようになる、と言われています。

自我の発達に関して多大な功績を残した研究者、ジェーン・ロヴィンジャー氏は、
「人間の意識の発達とは、曖昧さに対する耐久性の増加である」と表現していますが、

これが俗に言う、人間としての器が大きくなる、人間的に成熟していく、ということだと思います。

そして、リーダーやマネジャーの伸び悩みのほとんどは、

この意識の発達が止まることによって起こります。

能力やスキルの問題ではなく、人間としての意識の発達の問題、

この視点が非常に重要だと思います。

そもそも人間の成長には、水平的成長と垂直的成長の2種類があります。

水平的成長とは知識やスキルの獲得であり、垂直的成長とは、器の拡大や認知の枠組みの変化です。

とりわけ”他者を通じて物事を成す”存在であるリーダーやマネジャーが、水平的成長よりも垂直的成長が求められることは言うまでもありません。

特に上位のポジションであればあるほど。

意識の発達が先に進もうとするとき、必ずサインがあります。

それが葛藤であり、心の揺らぎです。

葛藤が起こるということは、

生まれ変わるタイミングを示しています。

その葛藤が大きければ大きいほど、その葛藤の後は別人のように生まれ変わる。

よく「一皮むける」「殻を破る」という表現がありますが、

まさに脱皮し、新たな姿に生まれ変わることを意味します。

リーダーやマネジャーはこの「心理的な葛藤」に直面する場面が非常に多くなります。

葛藤が起こるということは、「脱皮する」タイミングに来ている証であり、

それを乗り越えられる力があることを意味しています。

乗り越えられない壁にしか人は直面しませんから。

これは、真実だと思います。

なので、葛藤を悪いもの、必要のないものとして扱わないことがまずもって大切です。

だって心地悪いですよね。

イライラするし、モヤモヤする。

朝の目覚めを悪いし、夜もうなされる

身体もだるくなるし、何もしたくなくなる

色んな嫌な感情が自分の中を支配します。

できれば逃げたいです。

直面したくない。

でも、逃げれば逃げるほど、その葛藤は大きくなります。

不可避です。

これは早いとこ諦めた方がいい。

なぜって、

自分に必要で起こっているから、場所を変え、人を変え、出来事を変え、

避けていた分、また大きな波となって押し寄せます。

嫌が応でも直面させられるんですね。

「こっち向けーーーー!!!」って、

自分が自分に言うんです。

自分が自分のために引き起こしているから、

そりゃ逃げても逃げてもついてきます。

葛藤の中に潜むエゴと向き合う

葛藤が起こるってことは、次に進んでくださいってサインです。

そのときは、潔く、自分と向き合う

それしかないと思います。

その時はめちゃくちゃ苦しいです。

たくさん傷つくし、死にそうになる。

というか一回死にます。

そこには過去の自分を殺す作業が伴います。

葛藤の中には必ずエゴが住んでいます。

例えば、偉くなりたい、尊敬されたい、優しくされたい、能力をつけたい、注目されたい、必要とされたい、助けたい、守りたい、お金を稼ぎたい、喜んでもらいたい、好かれたい、人の役に立ちたい、

これら全部、人間が持つエゴです。

特に人のためっていうのは耳障りがよいので注意が必要です。

表では素晴らしい人、裏では別人格。

特に最近は、エゴを完全に抑え込むことができなくなっているので

必ずどこから顔を出します。

人のためというのが、

エゴからなのか、純粋な動機からなのか、

見分け方はシンプルです。

感謝とか反応とか、見返りを求めていたら

その優しさはエゴです。

相手のためでなく、本当は自分のため。

これだけやったんだから

これだけ返してよねって

という相手への期待、

これは、条件つきの優しさ、取引です。

純粋な他者貢献は無目的、

見返りを求めていない。

特に「誰かのために」が強い人は

自分のエゴイスティック、ワンマンさを認めなければ先に進めない。

昔から、

「経営者として大成する人間は、悪いことができて、悪いことをしない人間だ」

と言われますが、

よい自分もそうでない自分も受け入れる、

清濁併せ呑む、

それは、言い換えれば、

未熟な自分のまま生きる、ということ、

未熟さは人間らしさ、

欠点は人間的魅力、

だから、自分の未熟さを愛する、

それが成熟していくということだと思います。

そして、

そんな未熟さを克服しようとすること、隠そうとすること、なくそうとすること、

それが人間のエゴ。

決してエゴが悪いわけではありません。

エゴは生きる原動力になりますから。

でも、年を重ね、経験を重ねていくと

そこに違和感が生まれてきます。

なぜか、

エゴはどれだけ頑張っても満たされるのは一瞬

ずっと空腹状態で終わりがないんです。

どれだけエゴを満たしても、その後の来るのは焦燥感です。

これを何度も繰り返していると

いい加減気づきます。

この先に幸せはなさそうだと。

それでも、同じループを回します。

仕方ないです。

それが生き方の癖になってしまっているので。

それでも、いつしか限界にきます。

もうこれ以上は無理、限界

もうこのエゴは持ちきれない

そこで、言い加減握りしめていたエゴを手放そうとします。

コントロールしようとしていたものを諦める。

この段階は心理的にボロボロです。

でも、最後の最後までしがみつくんですね。

エゴの目的は、自分を傷から守ることですから。

傷つかないように自分をコントロールすること

他人をコントロールすること

そうすることで自分を傷つくことから守る

それがエゴの目的です。

特に強いエゴの裏側には自分でも気づかないほどの強烈な自己否定がある、

その傷は自分にとってあまりにも大きいから、

ボロボロになりながらも、ずっと自分をその傷から守ってくれている

それがエゴの優しさ、

エゴは決して悪者ではない。

だから、「今までありがとう」と

感謝と共にエゴを手放す

それはたしかに見たくない自己と直面する

痛みを伴う作業かもしれないけど、

そこを通らずして先には進めない。

そうすることで、全く新しい選択肢が生まれる

これまで言えなかった一言が言えるようになる

これまで拒否していた場所に飛び込めるようになる

これまで受け入れられなかった人を受け入れられるようになる

安全地帯から危険地帯へ一歩踏み出す、

それが「脱皮する」ということだと思います。

自分の限界を越え、チームの限界を越える

エゴを手放す手前には、必ず恐怖が立ち上がります。

人が最も恐怖を感じることは、未知の体験です。

それは、

先が見えないことへの不安、

思い通りできなくなることへの不安、

大切なものを失うことへの不安

周りから受け入れられなくなることへの不安

やったことがないことが人間一番怖い。

慣れ親しんできた方法が一番安心安全。

こうなったらこうするって、予測を立てておきたい、

コントロールしておきたいのがエゴです。

でも、このエゴが自分の限界を決めてしまいます。

リーダーやマネジャーは、どうしても心理的葛藤に直面しやすいです。

それは、組織の成長と共に、人間的成長がそこに伴わなければそのチームや組織は崩壊してしまうからです。

最初は気心が知れた仲間だけでよかったのが、色んな価値観や考え方を持った人間が増えていく、

中には自分とは相入れない全く異なるタイプの人間も現れます。

それを含めることができるのか、それとも弾くのか、それとも自分の言う通りに動かそうとするのか、

ここでリーダーやマネジャーの人間としての器が試されます。

自分の限界がチームの限界、組織の限界になり、

自分の限界を突破することが、チーム、組織の限界を突破することになる。

だから、嫌が応でも突きつけられます。

リーダーは誰よりも誠実に自己と向き合う

最終的にはそこが問われるのだと思います。

イギリスには、

The darkest before dawn 夜明け前が一番暗い」

という諺があります。

いつまでも底にいるわけじゃない、

必ず底をつき、跳ね上がるときがくる。

だから、

どれだけ土砂降りの中にいても

どれだけ真っ暗闇の中にいても

その先にある未来の自分を

どうか信じてあげてください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

鷹の選択

人間の精神的発達のプロセスを分かりやすく表している動画だと思います。

ぜひ一度見てみてください。

https://www.youtube.com/watch?v=2fID1VRXztw

著者プロフィール 渥美崇史

  • 1980年静岡県浜松市生まれ。株式会社ピュアテラックス 代表取締役。
  • 2003年、大学卒業後、ヘルスケアに特化した経営コンサルティンググループに入社し、評価制度や報酬制度の設計などの人事コンサルティングに従事する。その後、戦略や仕組みだけでは経営が改善されない現実を目の当たりにし、それらを動かすマネジメント層の教育に軸足を移す。2009年、マネジメントスクールの新規事業を立ち上げ、事業責任者を務める。約30,000人以上のマネジャーの成長を支援する事業に育てる。
  • その後、自社の運営にもマネジャーとして携わる中、トップの世代交代による経営危機に直面する。業績低迷、社員の大量離職が続く中、学習する組織、U理論といった組織論・変容理論に出会い、自身の人生観が180度変わるほどのインパクトを受ける。その知見を社内に持ち帰り、約2年間をかけて新しい組織文化への変革に取り組み、 当時の過去最高利益を達成する。その実体験と理論をベースにクライアントの組織変革を始める。
  • 2016年、13年間勤めた会社を退職し、独立する。社名の由来である”命の輝きを照らす”をミッションに、人間主体の組織マネジメントへの変革と自己のオリジナリティを生かしたリーダーシップ開発に力を入れている。
  • 好きな書籍は岡本太郎の「自分の中に毒を持て」。自由・冒険・探求がキーワード。犬並みに嗅覚が鋭い。この世で一番嫌いなものはオバケ(極度の怖がりのため)。射手座AB型二人兄弟の次男。
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