非常に敏感な人、HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)について思うこと

2021.04.30

コラム

生きる

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先日、久しぶりに東京に行きました。

表参道、銀座、三軒茶屋と渡り歩き、コロナ禍と言えどもどこも人の密度が濃く、やはり東京は訪れる場所で、住む場所ではないとあらためて痛感しました。

そして、浜松に戻ってきた瞬間、人の少なさにホッとしました。

今日は、HSPについて書きたいと思います。

HSPとは、Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)の頭文字をとった略で、その名の通りエイチ・エス・ピーと呼ばれています。もともとアメリカの心理学者であるエレイン・アーロン博士が提唱した概念であり、生まれつき「非常に感受性が強く敏感な気質を持った人」と呼ばれています。

HSPは後天的なものではなく、先天的な気質であり、アーロン博士によると、生まれつき繊細は人が5人に1人の割合で存在するようです。

最近では、ロンドンブーツの田村淳さんが自身がHSPであることを明かし、また「繊細さんの本」という書籍がベストセラーとなり、その影響により、一般にも広くその概念が広まってきているように思います。

HSPとそうでない人は脳の神経システムに違いあると言われており、ハーバード大学のある調査によると、繊細な人は赤ちゃんの頃から刺激に対して鋭く反応し、ストレス状況にさらされたとき、神経が高ぶっていたり、警戒しているときに分泌されるホルモンが多く分泌されることがわかっているようです。

以下は、アーロン博士によるHSPの自己診断テストです。全部で27問あります。イエスかノーで答えてみてください。(少しでも当てはまるならイエスで)

  • 感覚に強い刺激を受けると容易に圧倒されてしまう
  • 自分をとりまく環境の微妙な変化によく気づくほうだ
  • 他人の気分に左右される
  • 痛みにとても敏感である
  • 忙しい日々が続くと、ベッドや暗い部屋などプライバシーが得られ、刺激から逃れられる場所にひきこもりたくなる
  • カフェインに敏感に反応する
  • 明るい光や、強い匂い、ざらざらした生地、サイレンの音などに圧倒されやすい
  • 豊かな想像力を持ち、空想に耽りやすい
  • 騒音に悩まれやすい
  • 美術や音楽に深く心動かされる
  • 時々神経がすり切れたように感じ、1人になりたくなる
  • とても良心的である
  • すぐにびっくりする(仰天する)
  • 短期間にたくさんのことをしなければならない時、混乱してしまう
  • 人が何かで不快な思いをしている時、どうすれば快適になるかすぐに気づく(例…電灯の明るさを調節したり、席を替えるなど)
  • 一度にたくさんのことを頼まれるのがイヤだ
  • ミスをしたり物を忘れたりしないようにいつも気をつけている
  • 暴力的な映画やテレビ番組を見ないようにしている
  • あまりにたくさんのことが自分の周りで起こっていると、不快になり、神経が高ぶる空腹になると、集中できないか気分が悪くなるといった強い反応が起こる
  • 生活に変化があると混乱する
  • デリケートな香りや味、音、音楽などを好む
  • 同時に自分の中でたくさんのことが進行すると気分が悪くなる
  • 動揺するような状況を避けることを、普段の生活で最優先している
  • 大きな音や雑然とした状況など強い刺激に悩まされる
  • 仕事をする時、競争させられたり、観察されていると、緊張し、いつもの実力を発揮できなくなる
  • 子供のころ、親や教師は自分のことを「敏感だ」とか「内気だ」と思っていた

27項目中14項目以上(過半数)がイエスなら 「非常に敏感な人」 である可能性が高いとのことです。

みなさんはどうでしょうか。

私は27項目中19項目がイエスなでの、このテストで言えば全くもってHSPです。

それに「あなたは非常に敏感な人ですか?」と問われれば、そりゃそうでしょ、と普通に思うので、体感的にも自分がHSPであることはよく分かります。

ちなみに、医療福祉に従事されている方は、感覚的にはこのHSPの方が非常に多いのではないかと思います。HSPの特徴は、その繊細や敏感さ、つまり気づきや感度の高さにあります。それは目の前の相手のニーズに応えることを生業とする対人支援業務によって発揮されます。また、その繊細や敏感さを芸術分野で表現している方も多くいます。逆説的に言えば、人の痛みを取り除きたい、他者の心に寄り添いたい、目の前の人を喜ばせたい、そういった本能的ニーズを持っているからこそ、HSPという資質を備えて生まれてきた、と解釈することもできます。

HSPは先天的資質であるため、変えようと思っても変えられません。私自身の体験の含めて言えば、HSPの方は、若い時期は、とても生きづらさを感じるような体験をしてきているのではないかと思います。特に現代のような日本社会においては。

HSPとそうでない人との大きな違いは、その情報量の多さであると思います。HSPでない人は何でコミュニケーションするかと言えば、多くは耳で聞く、これは言語メッセージです。

それに対してHSPの人は聴覚はもちろん、視覚、触覚、嗅覚、味覚も含めた五感をフル活用しながら世界とコミュニケーションします。もちろんHSPでない人も五感を使いますが、HSPの人の五感は羽毛のように繊細であるため微細な変化をキャッチします。相手の表情、雰囲気、言葉のニュアンス、声色、ふとした直感、バックグランド、等々、言語メッセージだけでなく様々な非言語メッセージも含めて受け取るため、HSPでない人と比べると圧倒的に情報量が多いのです。そして、多くの場合、最初はその情報量の多さに圧倒されます。

それは、必要な情報、そうでない情報全てを丸ごと拾ってしまうからです。私なりの言葉で言えば、知りたくもない人の思いや気持ちが全細胞から勝手に入ってくる、という感覚です。全細胞を開いた状態で世界と対峙する、裸でジャングル歩くのと一緒です(歩いたことありませんが?)。だから傷つくことも圧倒的に多くなります。

もう少し言えば、子供ながらに大人の嘘や社会の矛盾に気づいてしまうため、それがとても深い傷となって残ります。かといってそんな内側にある葛藤や苦悩を上手く表現する言語能力も勇気も相手もいないため、多くの場合は内に籠ります。

そして、そんなむき出しの感性を守るために、自分なりに防衛策を身につけます。多くの場合は理性によるシャットアウトです。私が知る限り、めちくちゃ理性的な人は、めちゃくちゃ繊細で敏感な人が多い、という印象です。それは柔らかすぎる感性を守るためには、分厚い理性が絶対的に必要だからです。特に10代の頃なんて、ズタズタにやられてしまいます。

しかし、そこには副作用があります。理性で覆えば覆うほど、自分と他者、自分と世界は切り離されていくため、ますます孤独感が強くなっていきます。どうせ分からないし、分かってもらう必要もない、社会をどこか斜めに見るようになってしまう、それも自分を守るために必要な防衛策の一つです。

私が10代頃は、HSPという概念などないので、なぜ自分だけこんなに生きづらいのか、自分はおかしいのではないか、そんな思いを内に秘め、ただただ襲ってくる情報に圧倒されながら、その情報を「あれはこうで、これはこうで…」と一つひとつ反芻して自己処理する、ということを毎晩やっていました。なんて面倒くさい奴だと何度も自分を呪いました。おかげで頭も心もおかしくなりそうで、原因不明の金縛りに毎晩あっていました 笑。

大人になり、そんな自分の気質を理解し、自分との折り合いをつける術を少しづつ身につけてきましたが、それは本当に一歩一歩という感覚です。

そんな中、アメリカの神学者であるラインホールド・ニーバーの「ニーバーの祈り」というものを知りました。

『God, give us grace to accept with serenity the things that cannot be changed, courage to change the things that should be changed, and the wisdom to distinguish the one from the other.

神よ、変えることのできない事柄については冷静に受け入れる恵みを、変えるべき事柄については変える勇気を、そして、それら二つを見分ける知恵をわれらに与えたまえ。』

抽象概念というのは、人生経験が未熟だと理解するのが難しいですよね。

知った当初は分かるようで分からないぐらいの感覚でしたが、今ではその言葉の意味するところを多少は理解できるようになりました。

私は基本、諦めが悪い性格なのですが、「諦めない」ことと同じぐらい「諦める」ことが大切だと思っています。

人は自分の何かを変えたい、と強く願います。そして、その何かを変えるために必死にもがきます。最後まで諦めない、それを人は努力とも呼びます。

そして、どれだけもがいてもどうにもならないことに気づきます。そして白旗を挙げ、降参します。変えることはできないんだ、と諦めます。投げ出す、とは違い、仕方ない、と受け入れます。

その瞬間、変えるべき対象だったものは、自分に与えれたギフトであったのかもしれない、という気づきが生まれます。これまでの痛みや苦悩も、そのギフトを生かしていくために必要な実地訓練であったことを知ります。

諦めないからこそ、諦められるのだと思います。

そして、諦めることで、視界が開かれていくのだと思います。

私は敏感で傷つきやすく、生きづらを感じる自分を消してしまいたい、変えたいとずっと思っていましたが、30歳ぐらいを境に、それがどうしようもない自分だよな、それも自分として生きるしかないよな、という心境になり、そして、たとえ生きずらさを抱えながらも、生きる手応えを感じながら生きるほうがよっぽどましなだなと思うようになりました。

変えることのできない事柄、HSPはそのひとつだと思います。

それ以外にも身体的特徴、運動神経、家系、気質、才能、等々、様々な変えることのできない事柄が人にはたくさんあると思います。

それでも、もし望む望まないも含め、それら全てをもっと大きな自分という存在が選んで生まれてきた、という視点に立ったたら、そこからどのような世界が見えるでしょか。どのような可能性の未来が開かれていくのでしょうか。

変えられないものの根底にあるのは、人それぞれが世界を代表して担う、人類共通の普遍的な願いであり祈りではないかと思います。

自分で言うのも何ですが、HSPの方に共通して感じるのは、他者、そして世界への純粋な理想と優しさです。

世界はこうあってほしい、こうであるはずだ、みたいな願いがあります。それは今の時代に不足しているビジョンでもあります。だからこそ、そうでない現実への落胆や諦め、憤りも強くあります。それらも含めて、今の自分にできる一歩を歩んでいくしかないのだと思います。

七転び八起き、

何回転んでも、起きたいときにまた起き上がればいい、

それでいいのではないかと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

関連セミナー紹介

セルフ・コンパッション(自分への思いやり)
自分を犠牲にせず、人の役に立つには 〜自分に寄り添い、自分と共にいる力〜

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※参考記事:http://pure-terax.co.jp/2020/07/17/漫画「鬼滅の刃」を読んで、人の心について思う/

【日時/テーマ】

第1回:9月23日(木)10:00〜12:00 自分を慈しむ技術 〜自分で自分を追い込まないために〜

第2回:2022年月3月26日(土)10:00〜12:00 本当の支援とは何か 〜自己犠牲に陥らないために〜

※各回テーマが異なります。単発で受講いただく講座です。

【対象】

医療福祉に従事する管理者・リーダークラス

【金額】

通常価格:3,850円(税込)

早割価格:3,300円(税込)※第1回は7月23日まで、第2回は2022年1月26日までにお申し込み頂いた場合

※いずれも1回受講当たりの金額です。

【講師】

株式会社ピュアテラックス 代表取締役 渥美崇史

【受講方法】

zoomによるオンライン研修

【申込み先】

第1回:9月23日(木)https://peatix.com/event/1903193/view

第2回:2022年月3月26日(土)https://peatix.com/event/1869557/view

著者プロフィール 渥美崇史

  • 1980年静岡県浜松市生まれ。
  • 2003年、大学卒業後、ヘルスケアに特化した経営コンサルティンググループに入社し、評価制度や報酬制度の設計などの人事コンサルティングに従事する。その後、戦略や仕組みだけでは経営が改善されない現実を目の当たりにし、それらを動かすマネジメント層の教育に軸足を移す。2009年、マネジメントスクールの新規事業を立ち上げ、事業責任者を務める。約30,000人以上のマネジャーの成長を支援する事業に育てる。
  • その後、自社の運営にもマネジャーとして携わる中、トップの世代交代による経営危機に直面する。業績低迷、社員の大量離職が続く中、学習する組織、U理論といった組織論・変容理論に出会い、自身の人生観が180度変わるほどのインパクトを受ける。その知見を社内に持ち帰り、約2年間をかけて新しい組織文化への変革に取り組み、 当時の過去最高利益を達成する。その実体験と理論をベースにクライアントの組織変革を始める。
  • 2016年、13年間勤めた会社を退職し、独立する。社名の由来である”命の輝きを照らす”をミッションに、人間主体の組織マネジメントへの変革と自己のオリジナリティを生かしたリーダーシップ開発に力を入れている。
  • 好きな書籍は「自分の中に毒を持て」「星の王子さま」。自由・冒険・探求がキーワード。犬並みに嗅覚が鋭い。この世で一番嫌いなものはオバケ(極度の怖がりのため)。射手座AB型二人兄弟の次男。
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