ファミリー経営の事業承継はどのように進めるのか① 幼少期における事業への意識づけ

近年、多くのファミリー経営の現場において、トップの世代交代のタイミングに差し迫っていながらも、あるデータによると約半数は後継者が見つからないことを理由に廃業を予定しています。
また、それに相まって事業承継のマッチングサービスが普及、2021年のM&A(企業合併)の件数は4,280件と過去最多を示しています。
経営者の年齢も高齢化が進み、概ね70歳付近を境に引退するケースが多い中、未だ後継者が決まっていない会社は少なくありません。
後継者が決まらない理由の上位に「子どもに継ぐ意思がない」がという理由があります。
戦後、イエ制度が解体され、核家族化が進み、集団主義から個人主義へと移り変わり、事業と家族と接点が薄まってきている中、「子どもには自分のような苦労はさせたくない」「子どもには自由に自分の人生を歩んでほしい」など、そもそも「親が子に将来事業を継いでほしい」という意識を持たれている経営者の方は少なくっているように感じます。
その時、家族以外の誰かが継いでくれればよい、という考えもありますが、実際問題として、経営者という大役を担うためにはそれ相応の実力と覚悟が問われ、そのような人材を見つけ、育て、その責任を担ってもらうことは、そう簡単なことではありません。
何よりファミリー経営の最大の強みである、「長期視点による独自性の追求」「世代交代によるイノベーション」といった利点が活かせません。
日本は世界トップの企業長寿大国ですが、親から子へ、当たり前のように事業を継承している会社の多くは、幼少期から事業への意識づけというものが行われています。
例えば、
- 社員旅行、忘年会など会社行事に参加する
- 日常生活の中で事務所に足を運ぶ(生活の一部になっている)
- 従業員を家に招き、一緒に食事をする
- 食卓で会社に関する会話が日々される
- 創業記念日を従業員と共に祝う
などなど
特に創業期は、家族と事業が密接なので、意識せずとも子供は親がやっている仕事との接点がもたれ、子は親の背中を見て育ち、言われなくとも「自分は将来この会社を継ぐんだ」という後継者としての意識が育まれていくのだと思います。
しかし、二代目から三代目、三代目から四代目と、徐々に家族と事業の接点は薄れ、親がどのような場所でどのような人たちとどのように仕事をしているのかが子からは見えにくくなります。
ダイエー、イトーヨーカ堂、イオンなど、戦後日本を代表する多くのチェーンストア企業を指導した渥美俊一氏はこのように言っています。
「人生は六十五で大抵の人が変わる。誰でも六五になると自分の死後を考える。それで、血のつながった者に跡を継いでほしいという気持ちが起こるんだ。生物としてね」
人の気持ちというのは年齢や経験ともに変化していく、極めて移ろいやすいものだと思います。
20年後、30年後も今の気持ちと変わらない、そのように考える方が不自然かもしれません。
いざ、世代交代のタイミングを迎えた時に、「子に事業を継いでほしい」そう思っても、その下地ができていなければそのような話することさえ憚れます。
承継の準備は早けれ早いほどよいと言われます。
その準備は、幼少期から始まっていると言っても過言ではありません。
子に事業を継承することが唯一解ではないかもしれませんが、「転ばぬ先の杖」として、早い段階から手を打っておくことが、選択肢を増やすという意味でも必要なことかもしれません。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
著者プロフィール
株式会社ピュアテラックス 代表取締役 渥美崇史
- 静岡県浜松市生まれ。大学卒業後、新卒でヘルスケアへのコンサティングを専門とした日本経営グループに入社。20代後半まで人事コンサルティングのキャリアを積み、その後、マネジメントスクールの新規事業を立ち上げ30,000人以上のマネジャーの成長を支援する事業に育てる。30代前半に「学習する組織」「U理論」をベースとした組織開発を始める。マネジャー、シニアマネジャーを経験し、35歳で独立。2018年、個と組織の成長・発達を支援する株式会社ピュアテラックスを設立。近年は、「成人発達理論」「インテグラル理論」「愛着理論」等の人間の発達の観点から組織変革やリーダーシップ開発、ファミリー経営の世代交代の支援に力を入れている。FBAAファミリービジネスアドバイザー資格認定証保持者
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