AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)の手法を使った経営陣合宿の取り組み

2022.10.11

コラム

事例

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概要

■目的

経営幹部が集まって、お互いを知り、自分と組織の未来を話し合う合宿会議(2日間)

①お互いを理解する ②自分と組織の未来について語り合う

■実施背景

大阪で複数のこども園を経営する歴史ある法人。組織が急速に大きくなり、事業所数も職員数も役職者数も増えてきたこともあり、あらためて経営層の意思統一や法人のこれからの未来を話し合うため、場所を変え、しっかり時間をとり、お互いを改めて知る機会、自分のことや組織の未来を考える機会をつくりたいという経営者の想いからからこの場が生まれました。

■実施内容

AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)とOST(オープン・スペース・テクノロージー)という組織開発の手法をベースに2日間の合宿会議が進みました。これらはホールシステムアプローチと呼ばれ、テーマや議題に関わる関係者が組織上の上下関係を取り払い、対話を通して創造的な意思決定を目指す手法の一つ。国際的には組織変革だけでなく、紛争解決や政府活動、市民活動など複雑性の高い問題解決のアプローチに活用されています。

取り組み内容

〇1日目

季節は初夏、法人の経営幹部12名が海と緑を感じるある施設に集まりました。

朝、早めに集合した参加者はみな「何が始まるんだろう、、」「自分のこと話すの嫌だな、、」「無茶ぶりあるのかな、、」と不安な表情。

会場をみなで整えて、イスのみ車座にして、お菓子も飲み物も準備して、

各自が事前に作成してきたシートを大きな模造紙に貼り付けて準備完了。

・どんな2日間になると、未来がより素晴らしくなるか?

・2日間の参加を通して、自分に期待すること、周りのみなさんへ期待することは?

渥美さんのファシリテートでプログラムがスタート。

2日間、このようなプログラムで進行します。

(ただし、、予定調和を前提としないので、プログラム通りいくかはその時次第!)

〈チェックイン〉

まずは恒例のチェックインから。

話したい人から、ぽつぽつと話し始めました。

うんうん想定通り、「緊張します」「心配で朝早く目覚めました」「話せるか不安です」という発言もちらほら。

〈これからの組織マネジメント〉

さて、数少ないインプットタイム。渥美さんから、社会変化とこれからの組織運営のあり方について、“共創”をキーワードに今回の合宿会議を行う意味と絡めながら、説明します。

〈関係性の質を高める〉

その後、各自で簡易的にFFS理論のタイプ診断を行い、自分の特徴を理解するとともにタイプが異なる人がいることを理解します。

その後、他者からフィードバックを受け、自分をより深く理解します。

ここでは、他者からのフィードバックをこそばゆく、嬉しく受け止めていた人が多かったですね。フィードバックの重要性を再認識しました。

〈昼食〉

昼食はビュッフェ形式。

美味しいご飯を食べながら、みな、緊張しつつも、徐々にほぐれてきた感じがします。

〈実現したい状態&そうでない状態を共有する〉

午後からは小グループに分かれて、下記項目に対して実現したい状態とそうでない状態を共有していきます。

・働く自分自身の、、

・働く仲間たちの、、

・グループの仕事の仕方の、、

・関連部署や他園の方々との、、

・お客様からみた私たちの

模造紙に付箋でぺたぺた。その後、他のグループの模造紙も味わってみる。

こうやって視覚化すると「あ、意見似てる」「他のグループは一味違うな」「この項目とこの項目は相関してくるね」と気づきも変わってきますね!

〈私たちのコアを探求する〉

さぁ、ここからグッと自己理解、相互理解を深めていきますよ。

精緻に設定されたインタビューシートに基づいて、ペアでインタビューをしていきます。

インタビュアーはインタビューシートの台本通りインタビューすればOK。

部屋を飛び出て、好きな場所を選んでスタート。

解放感ある屋外もいいですね!

私も一部参加しましたが、

その人の「人生のストーリー」「最高の瞬間」「ポジティブコア」「最高の未来像」をじっくり聞き、目の前のその人がどんな幼少期を過ごしてどんな経験をして、何を大事だと思い、どんな未来を望んでいるか、をとてもよく理解ができ、なんだか相手との距離感がぐっと縮んだ気がしました。相手に対してリスペクトの気持ちを抱きました。

〈チェックアウト〉

さぁ、濃かった1日も終了です。

話したい人から一言、チェックアウト。

「なんだかあっという間の1日だった」「楽しかった」「あの人の意外な発見があった」等、チェックインの時とは雰囲気が変わってきました。

そしてその後はお楽しみのBBQ!

開放的な場所で、みなそれぞれ自然と動いて、思うままに話せるBBQはいいですね。

みなさん、ちゃんと寝てくださいね。

〇2日目

〈チェックイン〉

おはようございます。今日もチェックインからスタートです。

昨日のペアでのインタビュー内容を小グループで共有した後、「自分たちのポジティブコア」を考えていきます。

その表現方法は、、、、こちら!

これらを自由に使って、小グループで「自分たちのポジティブコア」を形にしていきます。

例えば、言葉でまとめると「誰もとりこぼさない組織」だとしても、それを造形していくと、「どんな風にとりこぼさないのか」「それによって何が起こるのか」「周りはそれをどう見ているか」なんてこともイメージできて、より想いを表現できた気がします。

それにしてもみな、、、楽しそう!見ているこっちもわくわくします。

〈私たちのビジョンを共に描く〉

そして次は自分たちのビジョンを考えていきます。

その表現方法は、、、寸劇です!!

「30年後の法人の最高の未来像」をグループ単位で脚本し演じます。

小道具も自由に使ってOK。

メンバーからは悲鳴が笑。寸劇なんてやることないし、人前で演じるなんて嫌ですよね。

ところが一転、やってみると皆とっても楽しそう。

そして名俳優、名女優がたくさんいます。

意外な人の隠れた才能が見えたり、アドリブいれすぎて時間伸びたり、

大爆笑の寸劇でした。

何より、みなが望む未来像がありありと伝わってきました。

そして、「そんな未来、私も一緒に作りたい!」と私も心から思いました。

ちなみに渥美さんは感動して泣いていましたよ笑

〈昼食〉

〈情熱をもって取り組みたいテーマを挙げる〉

さて、いよいよ最後のセッションです。

皆で共創した実現したい未来に向けて、情熱をもって取り組みたいテーマがある人が、中央の紙にテーマを書きます。その後、複数挙がったテーマの中から、それぞれ話したいテーマを自分で選び、テーマごとに小グループに分かれて話しました。

勇気を出して、話しにくいテーマを挙げた人もいて、私はその行動に2日間の価値を感じました。

各グループで話した内容は、「議事録」としてA4用紙にまとめます。

次回、この議事録をもとに話し合った内容を共有し、実現のための方法や持続のための工夫を話すことを皆と約束し、2日間のセッションを閉めました。

〈チェックアウト〉

2日間濃い時間を過ごしたメンバー。

「あっという間だった、もっと話したい」「お互いの想いを知って、一緒に実現したいと思った」「自分を着飾っていたがバカな自分を出せた、童心に戻った」と1日目の朝とは違い、安心感を持ちながら未来をイメージしながら各自が想いを言葉にしていました。

この素晴らしいメンバーの想いが実現することを心から願います。

補足

2日間を通して、AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)という方法をベースに進めました。

AIとは、組織の問題ではなく強みや価値にフォーカスした対話型組織開発手法で、下記ステップがあります。今回は①②③までを2日間で実施しました。

①ディスカバリー(強みの発見):ペアインタビューでポジティブコアを見出し誇らしいストーリーを共有する

②ドリーム(理想の状態):実現したい理想の未来を小グループで考えて寸劇で表現する

③デザイン(表現方法の具体化):理想の実現に必要な具体的な行動を小グループで洗い出して「声明文」を作成し全体に共有する

④デスティニー(定着化):変革のエネルギーを持続し、日常の活動として定着させる

著者プロフィール

株式会社ピュアテラックス パートナー 神田朋子

  • 群馬県生まれ東京都在住。筑波大学大学院 数理物質科学研究科 修了。2007年、ヘルスケアに特化した経営コンサルティンググループに入社し、プロジェクトリーダーとして病院・施の人事コンサルティングを担う。その後、人材開発の領域に進む。
  • 2014年、同社を退職し、金融・航空・メーカーなど大手企業をクライアントとす る人材育成会社に転職し、コンサルティング営業を担う。裏方として第一線で活躍するプロフェッショナルをアテンドし、世の中のトレンドに触れる中、自分自 身が様々な偏見や常識に囚われていたことを知り、リベラルアーツ教育に力を入れる。
  • 2018年、結婚・出産を機に1年間の休養に入る。
  • 2020年、1児の母として職場復帰すると共に株式会社ピュアテラックスに参画。真の多様性(ダイバーシティ)の社会の実 現に向け、マイノリティである女性リーダーの育成に力を入れている。
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